新かながわ8/30付 シリーズ日米安保60年 「逗子・池子米軍基地」 神奈川の米軍・自衛隊基地の実態
週刊「新かながわ」の8月30日付1面記事「シリーズ日米安保60年 神奈川の米軍・自衛隊基地の実態」に、岩室年治議員が投稿した記事が掲載されました。以下の全文です。※写真は共同使用の野球場全体(改修前)。以下の他写真はブログ用に追加で掲載しました。
■シリーズ7回目は、日本共産党の岩室年治逗子市議に池子米軍基地について語ってもらいました。
池子米軍基地、正式名称は池子住宅地区及び海軍補助施設です。総面積は288ha(逗子市域は252ha)、その多くを緑地が占め、「池子の森」と言われているが、残念ながら区域の85haは破壊され、米軍住宅854戸と関連施設(追加で本設小学校)が建設されました。
当初は三者一体、反対の声をあげ
1979年に浮上した米軍住宅建設計画は、当初は市長・議会・市民の三者一体で反対の声を上げましたが、当時の三島虎好市長の条件付き受け入れ表明によって、議会と市民の世論は、緑派と容認派に二分し、激しく対立しました。その後、三島市長リコール、富野暉一郎市長と市議会解散のダブルリコール、住民投票の直接請求など行われ、市民団体(池子米軍住宅に反対し、自然と子どもを守る会)が政治団体(緑と子どもを守る市民の会)をつくり、富野市長(緑派)を誕生させました。逗子の闘いは、市民運動から政治活動へと変化、市長選と市議選は両派による政治戦として、激烈な政治闘争となりました。そして選挙通じて、9度の反対意思の審判を下しました。
しかし、94年当時の沢市長(緑派)が、県知事と国と米軍住宅受け入れの「三者合意」を締結。市長選では民主勢力の候補を擁立して闘いましたが、結果は自民党系市長(容認派)が当選、政治状況も一変、米軍住宅建設も進められました。96年に一部供用開始、98年にはすべて完成しました。緑派の市民運動は分裂、解散、運動は大きく後退しました。01年当初計画にない「米軍の本設小学校計画」も浮上、国は環境アセス手続きと建設も強行。14年8月に完成しています。
住宅の追加建設で国を提訴
03年に横浜市域に米軍住宅800戸の建設計画が浮上、当時の長島一由市長は強く反発、市民に信を問うと辞職、市長選を行ない再選し、改めて逗子市民の追加建設反対の意思を示しました。その後、追加建設は「三者合意」に反するとして、国を提訴する闘いを進めました。地裁は敗訴、高裁も敗訴。ところが、前市長から引き継いだ当時の平井竜一市長は最高裁への上告に係る弁護士費用を自らの与党に議会で否決させ、2期目の市長選では、反対方針を降ろし、国との交渉入りをめざし、追加建設を容認しました。池子基地内の西側運動施設と緑地含む40haについて、返還でなく、共同使用を受け入れ、今日に至っています。この市長選では旧緑派と民主勢力の共同候補で闘いしましたが敗れました。
日米合同委員会で共同使用が合意され、逗子市は「池子の森自然公園計画」(総額約8億円)を策定し、整備を進めました。しかし、これまで日米親善を名目に市民が無料で使用できた施設について、市条例で市民に使用料の新たな負担を求め、市と米軍との協定で米軍の優先利用を認めました。また、公園区域内の多目的トイレ(2か所で2千万円)や作業員詰所(8千万円)、自動扉(スライドゲートに2千4百万円)の新設、さら市内に硬式野球チームもないにもかかわらず、野球場2面のフェンスを硬式用に改修(1億円)など整備に2億円以上を投資、さらに米軍仕様の芝刈り、400m陸上トラック(調整池)などの運動施設の維持管理に年間5千万円の負担をし、豪雨なれば調整池清掃費35万円がかかっています。現在、17年の逗子市の財政危機以降、計画の整備は凍結されました。
このような実態は、国からの一部補助があっても、思いやり予算の肩代わりを地元住民へ求めているようなものです。
当時の平井市長は、共同使用は返還につながるとしていましたが、国への返還も遠のき、共同使用の固定化が続く結果、米軍基地の恒久化になろうとしているのが実態です。
市民と民主勢力粘り強い運動
全国の注目した緑派の市民運動は、挫折と変節によって事実上消滅しました。しかし、市民と民主勢力の粘り強い闘いは、コロナ禍、毎月の無言デモは562回を数え、緑派を再結集した「池子の森を考えるみどり会」も講演会やニュースの発行、市長への要請などを続けています。
逗子市民の願いは、軍都横須賀からの分離独立、「青い海とみどり豊かな平和都市」宣言にあるように基地ない平和にまちづくりであり、現在も「池子の森全面返還」は、逗子市の市是となっています。
↑写真 逗子市役所の庁舎正面懸垂幕 (17年9/9撮影)
池子米軍基地と共同使用の施設
↑写真 野球場 (共同使用 手前の既存フェンスと新設された硬式野球のための高いフェンス)
↑写真 米軍の小学校(基地内)
↑写真 「池子の森自然公園」40haの案内板(共同使用)
↑写真 自動ゲート(共同使用)
↑写真 公園作業員詰所・トイレ(共同使用)
↑写真 多目的トイレ(共同使用)
↑写真 公園内の池と緑地(共同使用)